Still Life

3/2(Thu) ~ 3/5(Sun) 10:30 – 18:00
Artist-in-Residence 賀茂なす


面高慧


広瀬菜々 & 永谷一馬
ACT Vol. 3《停滞フィールド 2020→2021》(2021、TOKAS本郷) 撮影:加藤健 画像提供:Tokyo Arts and Space


Artist-in-Residence 賀茂なす

Artist-in-Residense Kamonasuでは第7回目の展覧会に面高慧さんと広瀬菜々さん & 永谷一馬さんを迎え、グループ展「Still Life」を開催致します。

面高さんは、京都からボストン大学でペインティングM.F.Aを取得したのち、アメリカでの活動を経て、昨年、旦那さんと猫と共に東京に越して来られました。本展のシリーズは、自身のアメリカ時代に見た夢に登場する京都の風景と突如現れる犬の絵が原点となっています。動物が大好きな彼女は、幼少期の自分が写った写真や記憶を元に、登場人物が動物(主に犬で、最近は猫も)に置き換わった小さな世界を作り上げます。
コミカルなポストヒューマンの未来を匂わせつつ、個人的な記憶や想像の世界を覗き込むと、他人さへも懐かしさを覚え意識が逆行し始めます。古代ローマやイスラーム圏で挿絵として拡がったミニアチュールは、持ち運び可能な個人的で親密なイメージへと発展してゆきました。彼女が描く小さな世界も時制から解放された自由へと誘ってくれます。

広瀬さんと永谷さんは、関西から渡独しブレーメン美術大学でマイスターシューラーを取得してからは、ご夫婦でデュッセルドルフを拠点に活動されています。コロナが収束し久々の国内レジデンス参加に合わせて新作をドイツから持って来て下さいました。
日常的にある物に仕掛けを施し、私たちの思考を一時的に停止させ、視点の在り方を問い直すような作品を作っておられます。
ブロンズ、テキスト、インスタレーションと表現方法は様々ですが、本展タイトルに引用させて頂いたシリーズ「Still Life」は、生活空間のあらゆるオブジェクトが変形し時を留めているセラミック群です。それらが「いつ」を留めているのかは分からずのまま、セラミックを目の前にして現物を手に取った時の感覚が蘇ります。そして、とても硬いはずの陶器がフニャッと柔らかそうに在ることに違和感を覚え、身体的な記憶と現在の認知が合致せず崩壊が始まります。

A・ブルトンが採用したフロイトの自由連想法は、アートを始めとする自由な発想がある程度権限を持つようになった現代から振り返ると、シュルレアリスムをわざわざ宣言する必要があったのか?と疑問さへ抱きますが、第一次世界大戦で疲弊したヨーロッパの芸術家たちには、表層を取り払い深層心理を追求するための革命的な意志と行動が必要だったようです。

では、やわらかな疲弊が慢性化した現在ではどうでしょうか。

夢って現実じゃないの?
昨日と一昨日って何が違うの?
考えたことって何処にあるの?

普遍的且つ答えが見つからなさそうな疑問は、考えることさえせず、諦めるしかないという思い込みが蔓延っている様子が窺えます。日々のシュール化が困難な時がやってきましたが、静かに一人で答えのない質問を繰り返すことは個人の自由で、真の豊かさをもたらします。今日は、思想も思惑もなきシュルレアリスムを試みる良い機会がやって来たのかもしれません。

AIR KAMONASU コーディネーター
柳生顕代

面高 慧

1987年京都府生まれ。アメリカのウェスタンワシントン大学にてスタジオ・アートの学士号を習得後、ボストン大学大学院にてペインティングの修士号を習得。卒業後はアメリカと日本を拠点に制作活動と展示を続けたのち、2021年夏に東京に拠点を移す。動物が大好きで、動物を主人公とした作品を中心に制作を続けている。

広瀬菜々 & 永谷一馬

2007年よりドイツを拠点に活動。両者とも2014年ブレーメン芸術大学修了、マイスターシューラー号を取得。主な受賞、助成にブレーメン芸術大学最優秀賞(2012)、エアスターフェルクリンガー・アートアワード観客賞(2013)、ポーラ美術振興財団在外研修(2015)、ゾーリンゲン美術館ベルギッシュ・アートアワード観客賞(2017)等。
主な個展にダナイル美術館(2017)、国際交流基金ケルン(2018)、ウルム芸術財団(2019)、クンストフェライン・レバークーゼン(2021)他、主なグループ展にTOKAS本郷(東京 2020、2021)、越後妻有大地の芸術祭(新潟 2018)、ゾーリンゲン美術館(ドイツ 2017)、ヴェーザーブルク現代美術館(ドイツ 2014)など。

日 時 3/2(Thu) ~ 3/5(Sun) 10:30 – 18:00
会 場 Artist-in-Residence 賀茂なす
京都市下京区下長福寺町276 (BANKS KYOTO 2F)
展示作家 面高慧、広瀬菜々 & 永谷一馬
お問い合わせ kamonasu-management@ylabs.co.jp